千種駅からほど近い内山住宅

今は軒並み飲食店が入居しているが ここのいずれかにスタジオAがありました

40年以上前のことです

イラストレーターの林恭三さんから電話があり「安井君も一緒に誘って来てください」と

浅井慎平さんからお声がかかり行ってきました

矢野悦子さん 当時は'えっちゃん'と呼ばれていたのですが

恭三さんからは「慎平さんの妹だからネ」としか教えられていませんでした

'えっちゃん'は4月1日が誕生日だということで友人達を招き

慎平さんのスタジオで誕生パーティーをしたのです

今もそうですが'おぼこい'私は 慎平さんの妹さんだから失礼があってはいけないと

遠慮と緊張が交錯した気持ちで皆さんが楽しんでいる様子を拝見していました

 出席されているのは業界の先輩たちでお顔を拝見しただけで身がすくむ思いもありましたしね

宴も半ばをすぎ華やいだ雰囲気も一息ついたころで 恭三さんに「実は私の誕生日も今日なんですよ」

と話しかけました

しかし 「あっそう 」

エープリルフールを誕生日としている人は

当日にそのことを話題にしちゃ駄目ということを学習しました

恭三さんが連れて行ってくれた住吉町の雑居ビルにあったスナックのようなお店に'えっちゃん'はいました

なにしろ私は酒が飲めない お世辞が言えない 包容力がない 脳細胞は灰色だ とにかく世間ずれしていない

当時はウーロン茶みたいなフェイクウイスキーになりそうな都合のいい飲み物はありませんでした

かろうじて それっぽく見えるジンジャーエールをちびちび口元に運び間をとっていました

カウンターの中の'えっちゃん'が 私に「ねぇ動物園いかない!?」と誘いの言葉をかけてきた

昔も今も'おぼこい'私は (・_・ゞ−☆(^^;)<(_ _)>(^_^;)m(_ _)m(;^_^A (^^;;;

言葉にならないことばでむにゃムニャムニャッと ジンジャーエールを飲み干してしまいました

その後氷が融けるようにゆっくりと' おぼこい'私にも'えっちゃん'が慎平さんの彼女だということが理解できました

とにかく小柄で可愛かったんですよ

時を待たず彼女は11PMガール(夜11時に放映されていた深夜のワイドショー)でお茶の間に登場しました

「11PM」は'よい子'は見ちゃ駄目よの風潮があったくらい大人の番組でしたが

とにかく'えっちゃん'可愛かったんです

 

 

1966年制作の 邦題「欲望」原題「Blowup」

ミケランジェロ・アントニオーニ監督のこの映画は 私達の間で共通の話題になりました

'えっちゃん'は公園のシーンで木々のざわめきがステキと言っていました

 

 

デヴィッド・ヘミングス演じる人気カメラマンがファッション誌のために撮影するシーン

 

 

5年ほど前でしょうか ヴォーグ誌特別付録のバッグに映画のモデル撮影シーンが登場しています

ヘミングスがはいている白い綿パン 幅広のベルト流行りましたよ

 

 

当時の一流モデル ヴェルーシカに馬乗りになりながら撮影するシーンはあこがれでした

ヘミングスが手にするカメラはニコンF

私が Fを手に入れるのにたいした時間は必要ありませんでした

 

 

映画の筋はですね

若い女性(ヴァネッサ・レッドグレイブ)と中年男性が公園で散策しているところをヘミングスが偶然見かけシャッターを切ります

しかし女性に撮影しているところを知られてしまい ニコンからフィルムを抜くことを要求されます

以前のショットを曝露するわけには行かないと スタジオで現像後ネガを渡すことにするのですが

不審なカットが気になり 大きく引き伸した(Blowup)プリントを見ると 彼女の視線の先にライフルらしきものが

 

 

数枚後のカットには カップルがいた木の根元に何か人のようなものが置かれている

 

 

スタジオにフィルムを取りにきた女性と遣り取りをしている間に時が経ち夜は深まっていた

 

 


闇の中を公園に戻ってみると木の根元の茂みに 昼間スナップしていたカップルの中年男性の死体が横たわっていた

いそいでスタジオに戻ると室内は荒らされネガも大伸ばししたプリントも すべて何者かに持ち去られていて

ソファーの下に潜り込んでいた一枚の不鮮明な写真だけが残った

編集長のロンに事情を話し一緒に公園に行くようにうながすのだが マリワナパーティーらしい場所では相手にされない

空が白みかけるころ公園に戻るのだが 死体は消えていた

 

 

テニスをするパントマイムの集団

ラケットもボールも無い

ラリーが続きオーバーネットしたボールをヘミングスに拾うように視線をおくる

見えもしないボールを手にして ネットの中に放り投げる

しばらくして彼の耳にはポーンポーンとボールを打つ音が聞こえてくる

オイオイお前はいつも訳の分からないことばかり言いやがってぇ

はい〜 映画が訳の分からない映画なもんですからね

でもこの映画は1967年に 今年北野武監督が受賞したパルム・ドール賞をとってるんですよ

そうか それで'えっちゃん'はどうなったんだい

はい 矢野悦子さんは11ガールのあと東京に居を移しスタイリストと言う職業が確立されていなかったころから


努力勉強されて いまやカリスマスタイリストとして後輩のお手本になっていらっしゃいますよ

はい とにかく可愛かったんですからぁ